金属アレルギーについて
投稿日:2020年8月12日
カテゴリ:コラム
花粉、ダニ、猫、食物など数多くのアレルギー源がありますが、金属が原因のものが金属アレルギーと云われます。歯科金属の種類により、体の中で溶ける物があります。溶けた金属は唾液に混じっているタンパク質と結合し、消化・吸収後、皮膚に行き、代謝の激しい所に留まります。
よく見られる症状は、手のひらと足の裏を中心に水疱状の湿疹(しっしん)が繰り返し生じる掌蹠膿庖(じょうせきのうほう)症です。一見水虫と誤解されるケースもありますが、掌蹠膿庖症は無菌性の膿庖が主症状ですので、顕微鏡で見ても糸状菌は確認できず水虫ではないと診断されます。
また子供では「しょう紅熱」と間違われやすいようです。年長者の重度アトピーでは金属アレルギーの頻度が高いという報告もあります。体の皮膚や肛門、その他の口から遠い部位に異変が起きたとき程、歯科金属アレルギーが見落とされることが多いです。
診断がつかず突然の原因不明の皮膚病として悩みますが、歯科治療で口の中に入れている金属が原因とは思いもよりません。
このように歯科金属アレルギーはタンパク質+金属複合体が口から運ばれ、長い年月をかけて皮膚の下に溜まり、それを異物とみなした体が過剰反応を起こすものであり、数十年経ってから突然発症するケースも多く、鑑別するのが大変な病気と云えます。
金属アレルギーの有無を調べる方法
歯科でアレルギーを発症させやすい金属は「水銀」「ニッケル」「コバルト」「クローム」「パラジウム」など、唾液に溶け出しやすい金属が原因となりやすいようです。金属アレルギーの有無は、パッチテストで判定することができます。
パッチテストは、下記の金属、18種類のばんそうこうを背中に張り、どの金属に反応しやすい体質なのかがを調べます。自分に合った金属のみを使って歯科治療を行えば、金属アレルギーのリスクが減ります。
- パラジウム
- 水銀
- 金
- 白金
- コバルト
- ニッケル
- アルミニウム
- クロム6価
- 銀
- インジウム
- イリジウム
- 鉄
- スズ
- クロム3価
- 銅
- 亜鉛
- マンガン
(参考)必須微量元素の過剰と欠乏について
必須微量元素と言って、亜鉛、銅、クロム、セレン、マンガン、モリブデン、コバルト、ヨウ素といった体に必要な金属があります。が、言葉の通り、微量で十分です。ちなみに、適量のマグネシウムはアパタイトを強固にします。ただ、過剰になったり、欠乏したりするとそれはそれで、問題となってきますので、注意が必要です(下表参照)。
【必須微量元素の機能と欠乏/過剰症】
(1) 亜鉛 Zn
欠乏 | 主症状 | 顔面、会陰部からはじまり漸次増悪する皮疹 |
随伴症状 | 口内炎、舌炎、脱毛、爪変化、腹部症状、発熱、創傷治癒遅延、短躯、成長障害、免疫低下、精神症状(うつ)、味覚障害、食欲不振 | |
過剰 | 急性 | 相対的鉄、銅欠乏症状嘔気、嘔吐、腹痛、下血、高アミラーゼ血症、嗜眠傾向、低血圧、肺浮腫、下痢、黄疸、乏尿 |
慢性 | 生殖力低下、短身、味、嗅覚低下、貧血 |
(2) 銅 Cu
生理機能 | 造血機能、骨代謝、総合織代謝 |
欠乏症状 | 貧血、白血球減少、好中球減少、骨髄白血球系成熟障害、小児骨変化、骨年齢低下 |
過剰症状 | 嘔吐、嘔気、心窩部灼熱感、下痢、黄疸、ヘモグロビン尿症、血尿、乏尿、無尿、低血圧、昏睡、下血 |
(3) クロム Cr
生理機能 | 蛋白代謝、コレステロール代謝、糖代謝、総合織代謝 |
欠乏症状 | 耐糖能異常、呼吸商低下、体重減少、末梢神経障害、遊離脂肪酸増加、窒素平衡の異常、代謝性意識障害 |
(4 )セレン Se
生理機能 | 抗酸化作用 T3からT4への変換 抗ガン |
欠乏症状 | 筋肉痛、心筋症、爪床部白色変化 |
過剰症状 | セレノーシス(脱毛、爪剥離、中枢系障害) |
(5) マンガン Mn
生理機能 | 蛋白代謝、脂質代謝、糖代謝、生殖能、免疫能 |
欠乏症状 | 血清コレステロール低下、血液凝固能低下、毛髪赤色化、皮膚炎、成長障害、長幹骨骨端部X線透過性増加 |
過剰症状 | パーキンソン症候群、慢性初期、インポテンツ、無気力、傾眠、食欲不振、浮腫、筋肉痛、頭痛、精神興奮、疲労感、進行症状、錐体外路系障害 |
(6) モリブテン Mo
生理機能 | アミノ酸代謝、尿酸代謝、硫酸代謝、亜硫酸代謝 |
欠乏症状 | 頻脈、多呼吸、夜盲症、視野暗点、易疲労性、嗜眠、失見当識、昏睡 |
過剰症状 | 高尿酸血症、通風 |
(7) コバルト Co
生理機能 | ビタミンB12、造血 |
欠乏症状 | 悪性貧血、メチルマロン酸尿状 |
過剰症状 | コバルト中毒 |
(8) ヨウ素 I
生理機能 | 甲状腺ホルモンの作成、組成の代謝 |
欠乏症状 | 甲状腺腫、甲状腺機能低下症 |
過剰症状 | 甲状腺腫、甲状腺機能低下症 |
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